HakuTouGin

年來自分が考へた叉自分が多少實行し來りたる處世の方針は何處へ行つた。前後を切斷せよ、妄りに過去に執着する勿れ、徒らに將來に望を屬する勿れ、滿身の力を込めて現在に働けというのが乃公の主義なのである。                      「倫敦消息

2004/03/15

幸村誠『プラネテス 4』
第一部完,だそうで.別にこの話SFでする必要ないね,とか思ったり.でも(自称)宇宙人が出てきたりしたり.

僕はむかし人と人とが判り合えないのは,宇宙人みたいにテレパシーが使えないからだと思っていた.もし思っていることが直接伝えられるなら,お互いは理解し合えるだろう,テレパシーでも,あるいはサトラレでもいい.そうじゃなくて言葉を使うから,いろいろ面倒が起きるんだ.いくら言葉を費やしたって,どれほど詩人が努力したって,その思いは巧く表現できないし,他人の頭の中で言葉が理解されるときにも,大きく誤解の余地があるに違いない.千の台詞を連ねても,身振り手振りを加えても,どうしたって,自分と他人の間にはノイズが入り込むんだ.ケーブルで脳を直結できたらいいのに.なんていう風に思っていた.

それは端的に間違いだった.人には伝わらないかもしれない本当の心,っていうものがそもそもなかったんだ.頭ん中を開けたって,そんなとこにそんなものはないのだ.もちろん僕らに心はある.けどそれはあるっちゃあるけどないっちゃないのだ.この微妙な立場は定式化されるだけでなく,広まらなくてはならない,と感じる.