HakuTouGin

年來自分が考へた叉自分が多少實行し來りたる處世の方針は何處へ行つた。前後を切斷せよ、妄りに過去に執着する勿れ、徒らに將來に望を屬する勿れ、滿身の力を込めて現在に働けというのが乃公の主義なのである。                      「倫敦消息

2007/11/11

昔話01

小学生くらいの頃,地域の少年野球チームに属していたが,どういうわけだか甲子園に行ったり,プロ野球選手になるものだと思いこんでいた.どう贔屓目にみても,実力はせいぜい人並み以下にもかかわらず.まあ子供なので,まわりも自身もよく見えていない,ということができるかもしれない.当然それはいくつになっても変わらないのかもしれない.眼球は大体外を向いているので,おおよそ自身はよく見えないものである.

僕のルームメイトは学部こそ哲学科だったものの,服飾の専門学校へ行き,就職もした後になって僕と同期で大学院へやってきたらしい.理由はとくになく,どうもなんだか学校が楽しそうな気がしたらしい.案の定,ぎりぎりまで追い込まれている.競争が非常に激しいということは,少し落ち着いた目には明らかだが,まあ,わかんないときも多い.

中学校に上がる頃は時代小説をよく読んでいた.おじさんが電車でよく読んでいるようなやつである.中国春秋ものを気に入って読んでいたと思う.田辺の中央図書館に自転車で何度も何度も通ったはずだ.ハードカバーの本を買うようなお金はもちろん持っていないかった.そういう類の本の主人公はもちろん果てしなく出世していく(皇帝になってしまうんだから).遠くに行きたいとその頃に思っただろうか,それとも単に物語の主人公のようになりたい,と思ったのだろうか.気は小さく臆病であったが,田舎の中学生らしく,どうにかしてひとかどにならんものか,と妄想していたのかもしれない.

中一だったか中二だったか,中央図書館で,いつものように時代小説を借りるつもりが,どういうわけだか村上龍の短編集を借りていた.なぜだろう.どこかで名前を耳にしていたからだろうか,本当にランダムだったかもしれない.もちろん,本棚の大きなスペースを村上龍が占めていたので,なんとなく取り出してみたのかもしれない.時代小説作家の宮城谷昌光は「み」であるので「む」の近くではないか.『スワン』という短編集ではなかったろうか,と今思ってぐぐって見たらwikiに『白鳥』というのがあったからひょっとしたらそれを読んだのかもしれない.内容は何も思えていないが,たいへん刺激が大きかったように思える.後から推論しているだけでそのときは何もおもしろいと思わなかったかもしれないが,性描写や暴力描写,あるいはよくわからない大人の生態や都市の生活などに興味を覚えたのではないかと今は考える.